* * *

「ところで、どうしてクロちゃんがいるの?」

 ひとしきり笑った後、私はクロちゃんに訊ねた。

「うん。今日ぼくもう仕事終わりなんだよ。だから一緒に調べたり、ご飯食べたりしようと思って」
「そうなんだ」

 そういえば、クロちゃんが三関っていう位についていることは知ってるけど、今どんな仕事してるのか知らないんだよなぁ。
 家にいても仕事の話しないし、クロちゃんて。

「そういえば、どんな仕事してるの?」
「今は一応休暇扱いなんだけど、訓練したり、その指導したりしなくちゃいけないから、一応毎日、王宮の訓練場に行ってるって感じだね。今日は凱旋パレードがあるからもう終わり」

 そうなんだ。
 そういえば、この世界なのかこの国なのかは分からないけど、あまり平日、休日という観念がない気がする。
 年中無休かと思えば、店主の都合でいきなり休みになってたりするし。

「凱旋って、さっきもなんか言ってたね」
「うん。あいつの父親の凱旋パレードをやるの。午後から。ゴンゴドーラが村に出没するようになったから、その退治の成功を祝ってね」

「ゴンゴドーラって美章にも出るの?」
「出るよ。あれは全国どこにでもいるから。戦闘能力は低いくせに繁殖能力だけは高いからねアイツら」

「あれ? ゴンゴドーラって集団で襲われたら普通の人は生きて帰れないくらいの戦闘能力なんじゃなかったっけ?」
「普通の人はね。でも軍隊だよ? 能力者も何人もいるし、凱旋パレードなんてするレベルの相手じゃないんだよ。〝普通は〟ね」

 嫌味が含まれてるなぁ……。
 私は苦笑した。

「ま、ぼくなら一人で殲滅できるけど――とか言うんでしょ?」
「当然だろ?」

 私がからかったら、クロちゃんは堂々と胸を張った。
 二人でにやにやと笑い合う。

「……観に行くの?」
 若干見に行ってみたいなという思いが乗っかる。
 でも、クロちゃんは嫌そうな声音を出した。

「観に行くわけないじゃん――と、言いたいところだけど、ぼくも式典に呼ばれてるんだよね」
「じゃあ、行くの?」
「行かない!」
「ええ?」

 きっぱりと断るクロちゃんに思わず驚いてしまった。
 らしいっちゃらしいけど、良いの?

「だって、式典に呼ばれてるんじゃないの?」
「呼ばれてるけど……翼辺りに代理で行かすよ」

 面倒くさそうに言って、軽く手を振った。