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図書館へ行くと、もうすっかり顔馴染みになったのだろうか、カウンターのお姉さん達が愛想良く「おはようございます」とあいさつしてくれた。
(今まで一度もなかったのに……!)
驚きながら、同時に嬉しさもこみ上げる。
「おはようございます」
図書館なので、小声で挨拶をして会釈していく。
けど……どうも変だな?
お姉さん達は私を見ているというよりは、私の後ろを見ているような……?
怪訝に思って振り返ると、
「やっ!」
そこには片手を挙げて私にあいさつをする二十代前半に見える長身の優男と、四十代過ぎの恐持てな男がいた。
さっきの赤井さんと、帆蔵さんだ。
お姉さん達はこの人達を見てたわけね。正確には赤井さんをだけど。
「赤井さんよね?」
「そうよ!」
「ステキ!」
お姉さん達が色めき立ってひそひそと話している。
たしかに彼はイケメンだとは思うけど、チャライのは好みじゃない。
「図書館に用があったの?」
「え、ええまぁ……」
「俺さ、今暇なんだ。一緒に読んだりして良いかな?」
(ええ……。ヤダな。つーかつけてきたんかい)
チラリとお姉さん達を見ると、明らかに睨まれている。トラブルはごめんだよ。
帆蔵さんを見ると、彼は赤井さんに対してうんざりした顔をしていた。
「えっと……すみません。私、一人で静かに調べたくて……」
愛想笑でやんわりと断ると、赤井さんはすごく驚いた顔をしていた。
「へえ……」
感心するような声音が出されて、
「俺の誘いを二回も断る女がいるなんて……」
ぼそっと呟いて、いきなり彼は私に詰め寄ってきた。
「その服、ブランシティーネのだろ? 好きなの?」
きょ、距離が近い。
「ここのってわりと良いブランドだよね。でも俺あんま好きじゃないんだ。安くってさ! その服も確か、四瀬(セネ)くらいだろ?」
魔王が四瀬を二万と約した。
(二万!? そんなにしたの!?)
ってことは、全部で……もしかしたら十万くらいになるんじゃ……。クロちゃん、太っ腹だなぁ。
「シリーネの方が良いよ。そうだ、今から一緒に買いに行こうよ」
彼はずんずんと私に迫ってくる。
私はその度に後退する。



