「悪い癖ですよ。赤井様」
「良いじゃないか。少しくらい」
 帆蔵さんが困ったような顔をした。
 ジャケットの彼……赤井様と呼ばれていた彼は私に向き直って、

「キミ、今暇?」
(ナ、ナンパだ……。人生で初めてナンパされた!)

 ナンパってされてみると意外に怖いな。
 嬉しさもあるけど、若干の怖さもある。
 特に、この人達は……厳ついし(帆蔵)、チャラそう(赤井)だし。

「いえ、すみません。これからちょっと、用事があるので」
 苦笑しながら、会釈して後退りする。

「え~そうなんだ。じゃあ、しょうがないね」
 赤井という人は、さわやかに笑って手を振った。

(しつこい人じゃなくて良かった)
 私は心の中で安堵の息をついた。