私は厨房の皿洗いもしているので、本当に忙しい。
 よく今までこの二人でもってたなと思うくらい。
 なんでも、私がお店に通い出す少し前に辞めた人がいたんだとか。そろそろ本格的に人手を探さないとと思ってた矢先に私が来たので、渡りに船だったらしい。

 どうりで二つ返事で雇ってもらえたわけだ。
 私としてもラッキーだったんだけどね。二人とも良い人達だし。

 実は一週間くらい前から、毎日ではないけど賄をさっさと済ませて平煉さんに料理を習っている。
 まだメモを取るくらいで、実際に作れてはいないんだけど。
 仕込み中で忙しいにもかかわらず、質問にも答えてくれて、本当にありがたい。
 バイトは大体午後二時で終わるので、そのまま図書館に直行したり、町を見て歩いたりするのが、日課になった。
 
 まだ、町の外には出れてないけど、お金が貯まったら旅に出て情報収集をしたいとは思ってる。
 ただ、最近は、もう帰れないのかもと思いつつある。というのも、入国証を手にしたら見てみようと思ってた異世界に関する蔵書にある。

 やっと手掛かりにありつけたと期待に胸を膨らませて巻物を開いたら、なんと、ただのフィクション小説だったからだ。
 異世界を題材にした冒険あり、恋愛ありの、読み応えたっぷりの小説だったけど、私に必要な情報は皆無だった。