ラングルと一緒に入室した月鵬さんを、クロちゃんはソファに座りながら出迎えた。と言っても、こんばんはとか、よう! とかの挨拶は一言もない。
 ただ口元に笑みを浮かべているだけだ。

 そんなクロちゃんを、月鵬さんは黙ってじっと見た。
 二人が見詰め合うようにしている。

 でも、ロマンチックの欠片もない。
 どこか、張り詰めているような、ピリピリとした感じだ。

「いやぁ、良かったっすよ。無事で!」

 そこに、突然明るい声が響く。
 翼さんが快活に笑いながら、月鵬さんの肩を叩いた。月鵬さんは、びっくりして目を丸くした。

「そ、それはどうも……」

 戸惑うように言って、月鵬さんは苦笑を浮かべる。

「いやぁ。実は自分、花野井さんと一緒にいたもんで」
「え!?」

 私と月鵬さんの驚きが重なった。
 声に出して驚いたのは、私と月鵬さんだけだったけど、クロちゃんもびっくりした表情をしていた。

「花野井さん、月鵬さんの心配してましたよ。あと、ゆりちゃんも無事かなぁってしきりに言ってました。だから、俺もつられて二人の心配しちゃったりして。……いやぁ、花野井さんって、良い人っすね!」
「それは……どうもありがとうございます」

 月鵬さんは、上品に笑んで、頭を下げた。アニキを褒められたのが、嬉しそう。
 そっか。アニキ私の心配もしてくれてたんだ……。
 なんだか、ほわりと心が温かくなる。

「いやいや、こちらこそ。岐附から騎乗翼竜で送ってもらっちゃいましてぇ」

 翼さんは手を横に振りながら、ぺこりと頭を下げた。

「お前……」

 突如沈んだ声が聞こえた。