* * *

 味は文句なく美味しかったし、また来よう。

(今度はクロちゃんを誘ってこよう!)

 私はるんるん気分で店を出た。そのとき、道の奥の方からゲラゲラと笑う男の声が聞こえてきた。

「なあ、良いじゃねえか! ねえちゃんよ!」

 振り返ってみたけど、ちょうど建物の陰になっていて誰がいるのかは解らない。
 ふと、初日に言われたクロちゃんの言葉を思い出す。

『大通りは大した危険はないけど、裏道には入らない方が良いよ。強盗とか出るからね。もし行くんだとしても、絶対に奥には行かないこと! 良いね?』

 奥には行かないこと! ――の、奥って、どっからどこのことを言うんだろう? ここのことじゃないよね? 
 不安になりながらも、奥の様子が気になる。だって、男の言葉からして、誰か女の人がからまれてるんじゃないかな。

(もしそうなら、誰か呼んであげないと)

 私は意を決して、そろそろと歩き出した。薄暗い路地の角を覗く。

 建物の陰に隠れるように、三人の男がいた。
いずれも大柄な体型で、スキンヘッドが一人、狐みたいに顔が細いのが一人と、後ろを向いていて顔は判らないけど、黒髪の刈り上げが一人。向かい合うようにして立っていた。
 急に不安になった。

(女の人いないみたいだし……)

 踵を返そうとしたとき、男達の中心にもう一人、姿が見えた。
 白いローブのフードを被り、すらっとした体系に、華奢な肩……女の人だ。