「ここ、どこだろ?」

 尋ねつつ、辺りを見回してみた。
 どうやら、私達は森の中にいるようだった。視界の中は木と藪だらけで、空は狭い。深い森の奥とかだったらどうしよう……急に不安になってきた。

「……」

 クロちゃんは黙って、森を見回した。
 目線を一周させたところで、はっとした顔つきになり、片眉を弾く。怪訝そうな、半信半疑のような顔だ。

「もしかして……」

 そう呟いて立ち上がった。そしてそのまま、ズンズンと真っ直ぐに歩き出した。

「えっ、ちょ、ちょっと待ってよ!」

 私は慌ててクロちゃんを追った。
 クロちゃんは藪を掻き分けて、数メートル行ったところで止った。

(もう、なんなのよ!)

 混乱しながらクロちゃんを見ると、彼は真っ直ぐに何かを見据えている。私はその先を目線で追った。

「わあ……!」

 目にしたのは、大きなお城。
 ダージ・マハルのように左右対称で、聖ワシリイ大聖堂のようにカラフルだった。
 カラフルなのは、お城だけじゃない。城下町もおもちゃの家を並べたように色鮮やかだ。その町を白いレンガの塀が丸く囲っている。

「すごい!」

 可愛い!

「そう? ぼくは嫌いだけどね」
「そんな憎まれ口言わないでよ!」

 むくれながら振向くと、クロちゃんは真剣な顔をしていた。

(あれ。もしかして本気だった?)