「私はね、常々思っていたのだよ。この頬当の中はどんな顔なのだろう……とね。私にどんな嫌がらせをされても、沈まず、反抗的で、尚且つ、美しい目をした少年の素顔はどんなものなのだろうか……」
「はあ!?」
「それがどうだろう……! 想像していたのとはまるで違う。想像以上に、ろく君、キミはキレイだね」
「……はあ!? 脳沸いてんじゃないの!?」
「ふふっ」
ぼくが悪態をつくと、赤井は不適に笑んだ。
なんだこいつ。気持ちわるっ。
「安心して良いよ。ろく君が白星だということは、私しか知らないから。部下には任務を与えて、帰らせてから、キミの武装を剥いだからね。キミが白星だということは、二人だけの秘密だ」
「……はあ? 別にぼくはバレてもどうってことな――ひっ! どこ触って……!」
ぼくは、目を見開いた。
一瞬眼の前が真っ白になった。……信じられなかった。
やつは、ぼくの、股間を握ったんだ。
「な、なにやってんだよ! アンタ頭、おかしいんじゃねえの……!?」
正直に言って、ぼくはパニックだった。
お稚児になってたかもと思ったことはあったし、実際にヤッてる場面を見た事もあったけど、なんだこれ?
なんで、ぼく、こんな奴に襲われてんの?
「やっぱり剥けてないなあ。当たり前だけど。私が口で剥いてあげようか?」
「――死ね!」
ぼくは、あらんかぎりの毒々しさで睨んだつもりだった。
でも、やつはそれを見て嬉しそうだった。
(こいつ、変態だ!)
「やっぱり、後ろが良いだろうな」
「は!?」
ぼくは驚く暇も無く、後ろ向きに転がされた。
それでも、奴を睨みつけるぼくに、奴は不敵に笑って言い放った。
「いつまでその目が見れるのか、楽しみだ。私はその敵意に満ちた目が、絶望に染まって行くのが好きなのだよ」
「――殺してやる!」
「それは、楽しみだ」



