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赤井セイは天幕で豪快に酒を飲み始めた。
戦況が有利とはいえ、戦場の真ん中で酒を飲むなど……と、ぼくらは呆れ果てたが、止めるものは誰もいなかった。
戦時下にあっても酒を飲む事はある。あるが、赤井セイの飲み方は緊迫感に欠けていた。
あれじゃあ、夜襲があったとしても対応出来ずに殺されるだろう、
そういうレベルの飲み方だった。
(ま、そうなったらラッキーだけどね)
ぼく達は、厭きれかえって自分達の天幕へと戻った。
しばらくして、ぼくの天幕の前をやいやい騒ぎながら赤井達が通る気配があった。
それは、森の方へと消えていった。
「おいおい、マジかよ」
森を抜けた先は、敵陣がある丘へと続く一本道が広がっている。
ぼくは止めに行くか、放っておこうか迷った。
本音を言えば、放っておいて敵方の斥候にでも見つかって始末されてくれないかなと思っていた。
だけど、一瞬、ほんの一瞬だけ、赤井シュウの顔が過ぎった。
あんな父でも、やつは尊敬しているようだし、父に死なれる辛さは知っていた。
(大嫌いだ、本当に二人とも大嫌いだけど、行くしかないか……)
そんな仏心がぼくにあるなんて驚いたけど、ぼくは止めに森に向った。――本当に、バカな行動をしたもんだよ。
森に入ると、すぐに人の声が聞こえ始めた。
なにやら、複数人が揉めているようだ。
ぼくは、木陰に隠れてカンテラの火を消した。
様子を窺うと、カンテラの明かりに照らされて、複数人の人物が浮き出た。
(……女?)
赤井セイと、その側近の男五人が五人の女を取り囲んでいた。女は全員功歩の人間だとすぐに分かった。
容姿がそうだったからだ。
「私達、本当に道に迷っただけなんです!」
「嘘をつけ! 斥候にきたのであろう!」
「違います!」
「本当の事を言わねば、痛い目に遭うぞ!」
側近の一人がそう女達を脅して、剣を抜いた。
「わ、私達は、非戦闘員ですよ!」
女の一人が、声を荒げる。
だが、赤井達はにやにやと笑っていた。
こんな所に居れば、そりゃあ何かあると疑われる。
ぼくだって尋問するし、必要があれば拷問にもかける。
だけど、ぼくはすごく嫌な予感がした。



