それから夕食まで、私は中々外に出る気になれず、大好きな昼寝もせずに、塞ぎこんだ気持ちのまま、部屋でぼんやりと過ごした。
夕食に呼ばれて行くと、彩さんとアニキはもう席ついていた。
普段は二人だけ(たまに鉄次さんや月鵬さんもいるけど)の食事だったので、なんだか変な感じがする。
アニキは私を見るとにこっと笑い、それを彩さんが見て、不愉快だったのか私を睨んだ。
(なにも睨まなくても良いじゃない)
私は不快な気分で席に着いた。
「嬢ちゃん、紹介がまだだったな。彩だ」
「廊下で会いましたよね。ゆりです。よろしくお願いします」
私がぺこりと頭を下げると、彩さんは眉を僅かに跳ね上げただけで、なんの反応もなかった。
(挨拶してるんだから、返しなよ!)
ぴりっとした空気を掴んだのか、アニキが少し慌てたように、
「廊下で会ったのか?」
「はい。すれ違っただけですけど」
「とっても印象に残ってるわ。貴女、小さくて、可愛らしくて、〝剣之助〟の好みにしては珍しいわよねぇ」
彼女はにっこり笑いながら、嫌味爆弾を投下してきた。
(悪かったわね。小さくて(ちんちくりんで)可愛らしくて(子供みたいで)!)
男子には分からないだろうけど、これは明らかな嫌味よ。言い方に棘があるもの。その証拠に、彼女は小馬鹿にしたように微笑む。
「こいつは、そんなんじゃねえから」
「あら? そうなの」
アニキは素っ気無く言った。
彩さんは、嬉しそうに笑む。
それとは対照的に、私の心は沈んだ。
たしかに、〝そんなん〟じゃないけどさ。