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 月鵬さんと鉄次さんは、あの後すぐに帰った。
 私はお見送りをして、自室に戻ろうと廊下を歩いていた。その時、前から女性が歩いてきた。
 見慣れない人。
 キレイで真っ直ぐな黒髪に、淡い青い瞳。
 真っ赤な口紅を差して、長いまつげをぱちくりと瞬かせる。背が高く、すらっとしているのに、胸もお尻も見事なものだ。
 私は、一目で彼女が誰なのか分かった。
(多分、彩さんだ)

 私は気まずい気分で、彼女とすれ違った。
 すれ違うさいに、彼女は私を一瞥して、小さく鼻で笑った。

「なにあれ、感じ悪い!」
 私は小さくぼやいて、廊下を進む。
 本当に、なんであんな人を奥さんになんてしたんだろ。月鵬さんじゃないけど、アニキって趣味悪い。

(ビジュアルは文句ないのかも知れないけどさ。私なんて足元にも及ばないのかも知れないけどさ!)
 私はなんだかムカムカしながら部屋へと入った。