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翌日、学校を休んで一日中家にいると、誰もいない家は静か過ぎて、気が滅入そうだった。
だから、どこかに出かけることにした。
川原を散歩していると、清涼な秋風が吹きぬけていった。
「なんだか変な感じ……」
向こうの世界では、帰ってくるときは春で、こっちは今秋。
向こうの世界へ行ったときは、秋で、こっちの世界は春だった。
なんだか、一年経った世界にいる気分。
私は密やかに笑って、川原に座り込んだ。
そこで冷たい風に吹かれていると、
「あれ、谷中さんじゃない?」
私を呼ぶ声がして、振り返る。そこには沢辺さんがいた。
私が密かに憧れていたクラスメイト。美人で社交的で、あんな風になれたらなぁっていつも思ってたっけ……。なんだか懐かしい。
彼女は、スマホをいじりながら、私に向って歩いてきた。
私は立ち上がって会釈をする。
「どうしたの? 学校休みだったよね……あっ、入院してたんだっけ?」
「うん。そうなんだ。それで、大事を取って今日は休んだの」
「ああ。そうなんだ。大丈夫?」
彼女は心配そうに言って、私の隣に腰掛けた。
私は若干戸惑いつつも、その場に座った。
「うん。体はもう平気」
「そうなんだ。良かったね。倒れてたって聞いたけど、どこが悪かったの?」
「うん……風邪が悪化して、それで」
「ああ。肺炎とかそんなん?」
「うん。そんな感じ」
やんわりと誤魔化して、暫く沈黙が流れた。
チラリと覗き見た沢辺さんは、女優さんみたいに綺麗だった。
(こんな風に生まれてたら、告白だって自信持って出来るんだろうなぁ……)
羨望の眼差しを送っていると、沢辺さんが振り返った。ギクリとして、苦笑すると、沢辺さんはにこりと笑った。
その優しげな笑みを見て、私は不意に彼女に訊いてみたくなった。
「沢辺さんって、好きな人とかいる?」
「うん?」
突然の問いに、沢辺さんは驚いたように訊き返した。私は慌てて誤魔化そうとしたけど、沢辺さんは、
「そうだなぁ。いるよ!」
と、答えて、無邪気に笑った。
なんだかそれが意外で、私は呆然と、
「……そうなんだ」と返した。
「もう、恋人同士なの?」
「ううん。フラれたの」
「え?」
あっけらかんと言う沢辺さんに、私は目をむいて驚く。彼女はおかしそうに笑った。



