柚さんの手紙を読み終えて、言葉が出なかった。
 なんと言っていいのか分からないし、自分の気持ちもよくわからなかった。
 わかることは、柚さんの花野井さんへの想いは、吹っ切れていたということだ。新たに愛する人を見つけた。

 花野井さんは、どうだったんだろう?

 あの時、花野井さんはなんて言ったんだっけ?

『この長年の呪縛のような想いから、解放させてくれたこの男のために、俺は将軍になる事を受け入れた』

 この、呪縛のような想いから……。
 柚さんも同じように書いていた。
 呪縛のような恋情から解き放ってくれたって。
 もしかして、花野井さんも、とっくに吹っ切れていたの?
 妹の幸せだった日々を垣間見て、吹っ切れたの?
 それで、皇王子と碧王を守ろうと決めたの?

(わからない)

 私は、花野井さんじゃないから。
 でも、そうであったら良い。

(だけど、もう確かめる術もない……)

 不意に、苦しみが襲ってきた。後悔が押し寄せてきて、胸が潰されそう。涙が勝手に流れ出してきて、頬をとめどなく濡らした。
 言えば良かった。
 傷つく事なんて恐れずに。
 好きだって告げればよかった。
 なんで諦めたりしたんだろう?
 こんなに、好きなのに。こんなに逢いたいのに。
 でも、もう、何もかも遅い。遅すぎる。