「これ、柚さんの手紙だ……」
 私は夢中で、残りの巻物を開いた。


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 私は皇龍団を去ったあと、軍に入隊するまでの数年、様々な目に遭いました。
 そこで初めて人を殺めました。
 こんなに恐ろしい事を、あなたにさせていたのかと、私は改めて後悔し、しかし同時に生きて行くために、やらざるを得ない時もありました。
 そんな折、軍の入隊試験を耳にし、私は生きて行くために軍へ入隊しました。
 そこで、心を許せる仲間にも出会いました。
 中でも、亮という人物は、ぶっきら棒で短気だけど、本当は優しい私の大切な友人です。
 実は、彼に告白された事があったのですが、その当時、まだあなたへの想いがあった私は、それを断りました。
 時々、彼の気持ちを利用しているんじゃないかと思うときもあります。でも、それでも彼は私の得難い友人なのです。
 ずるいでしょうか?
 私は、軍で厳しい修行を受けました。何度かくじけそうにもなりましたが、仲間の笑顔に支えられました。
 おかげで、三関の地位に就く事が出来たんですよ。
 そして、私はあの人に出会ったんです。
 碧という名の彼は、奥さんと子供がいるのにも関わらず、私にアプローチしてきました。
 岐附では珍しくない事ですが、私は気兼ねしてしまって、地位のある人の誘いだというのに断っていました。
 しかし碧は、それを咎めることはなく、残念がっては無理に笑っていました。
 しかも、そのアプローチもかっこいいとはお世辞にも言えず、笑ってしまうほど、不恰好で、不器用でした。
 でも、そこが、好きだったのかも知れません。
 私は徐々に彼に惹かれていきました。
 その当時、あなたへの想いが完全になくなったわけではないけれど、それでも、過去のものへとなっていきました。
 奥さんが亡くなって、私は彼の告白を受け入れましたが、それでも彼の子に申し訳なく、私は彼と結婚はしませんでした。
 やがて、子を身ごもりました。
 彼の奥さんとその子らへ、罪悪感が生まれましたが、それでも、この子を産みたいと思いました。
 彼の子を、産みたいと思いました。
 私は、碧を愛しています。
 私は今、幸せです。
 子供は皇と名付けました。
 皇龍団から取りました。趣味が悪いでしょうか?
 それでも碧は、私の故郷だからと容認してくれました。
 私にとって皇龍団は、あなたとの思い出の場所です。
 兄である、あなたとの。
 今なら、胸を張って言えます。
「兄貴」と……。


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