* * *

「私が知っているのは、ここまでです」

 ぽつりと月鵬さんが言って、顔を上げた。

「何十年も柚様と会っていなかったあなたと、皇様が親子である事はありえません。それは、私も分かります。でも、何故、言って下さらなかったんですか。私にとっても、柚様は大事な人なんですよ」

 噛み締めるように言って、顔を伏せる。

「そんなに私を許せませんか……。もう信用も置けませんか? あの時、あんな、提案をしたから」
絞り込むような声音に、アニキは静かにかぶりを振った。
「違う。そうじゃない。お前のせいじゃねぇんだ」

 アニキは、そのまま黙りこんだ。
 その間を埋めるように、ぽつりと呟く声がした。

「俺は、知ってましたよ。皇王子の母君が彼女だって」