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「はあ……」
 布団の上で横になりながら、重苦しいため息をついた。
 もうすっかり朝になった空を見上げながら、起き上がる。

「ここから出たいなぁ」
 ぽつりと呟いて、手を真っ直ぐに上げて伸びをした。
「さて、と――」

 今日も毛利さんが来るっていうから、文句を言われる前に訓練でもしておこう。
 私は開けたばかりの目を閉じた。
(えっと、まずは……なんだっけ?)

「そうだ、暗闇、暗闇」
――暗闇に、一筋の光が……。

 真っ暗な闇を想像すると、火花のような白い光が一瞬弾け、それが、暗闇を緩やかに割くように降りてきた。

――吸って、吐く。
 静かに、でも大きく、ゆっくりと息を吸い込んだ。
 そして、ゆっくりと、吐き切るように、息を吐き出す。

――光が広がり、暗闇を光が覆う。
 風が吹き抜けるように、一瞬で闇が光に塗り替えられた。

――お腹の中心に意識を集中させる。
 おへその下ら辺が、一気に熱くなった。
 そして、その熱が、巨大な何かの塊のように感じられ、ぐるぐると廻り――あれ? 廻りださない。
 気持ち悪くならない……。
 これは、いけるかも!
 パッと、思い浮かんだ意識に集中した。

『ここから出たい!』

バン! 突如何かが破裂する音が響いて、私は驚きながら目を開けた。
「なに?」
 慌てて辺りを見回したけど、何かが起きた様子はない。
 慎重に音のした方向へ向うと、隠し階段が下に下りていた。

「え? やった!」
 一瞬きょとんとしたけど、確信めいた喜びがやってきた。
(あの音は絶対、バリアが外れた音だ!)
 念のためバリアに警戒しながら、階段を下り始めた。
 出入り口に差し掛かり、足先でチョンチョンとやってみるけど、あたる物は無く、弾け飛ばされもせず、空を切っただけだった。
「出られる!」

 私は勢い良く部屋へ戻り、着替えを済ませると、階段を駆け下りた。
 左右を確認したのち、一目散に駆け出した。
 久しぶりの部屋以外の景色に、私のテンションはMAXだった。

「やった! 自由だぁあ!」
 叫びたくなる衝動を抑え、小声で開放感を表した。
 この時の私は、本当に、今まで味わったことの無い嬉しさと、高揚感に包まれていたんだ。
 でも、数時間後には、外に出たことを後悔した。それこそ、心底。