―――――中島



 新宿の雑居ビルの前に停めた車の助手席で、俺は深く後悔していた。

ここに来る前に寄ったコンビニで、煙草を買っておくべきだった。


――チキショウ、あと一本だった。

隣の男は先々月に結婚したばかりで、嫁さんに言われたらしく、ここ1ヶ月禁煙している。


「コイツですよ中島さん、入国は愛染堂の貿易港からです」


運転席の小池がそう言いながら、俺に写真を手渡す。

俺は小池に渡された写真を眺めながら、小池の言葉に黙って頷く。

そして、セブンスターのシワクチャの箱の隅に寄った最後の一本を取り出す。