彼がどんな意図を持っていたとしても、私が彼のおかげで助かったこと、それは変わりない。

だから、彼が私を助ける意図がなかったことなんてどうでもよかったし、関係なかった。


彼があの場に遭遇してくれたこと自体がもう、私にとっては奇跡でしかないんだ。




「前から目障りだったんだよ、アイツらが。それを追い出すチャンスだっただけ。それでもお前は俺に感謝するのかよ」

「当たり前です」




他人に“その感情は間違ってる”と言われても、私がこの気持ちを覆すことはないだろう。




「変わってんな、お前」

「そうでしょうか」

「……着いてくれば。頬、手当てしてやる」




そう言われて気付いたのは、さっき男に殴られた頬っぺたで。

ぜんぜん気付いてなかったけど、覚悟していた以上に腫れているのが、鏡がなくてもわかった。


不思議なことに、さっきまでは気がつかないくらい何ともなかったのに、腫れていることを知ってしまうと急に痛みがやって来る。




「……あの人たちと同類なんかじゃないです」