「あっそ、そんなナリでか」

「そんなナリで悪かったですね」




チクチクと嫌味たらしく言ってくる彼に、私も負けじと嫌味たらしく言い返す。

なんでこの人は、いちいち突っかかってくるかな。さっきだって私がお礼言わないまま、カッコつけて去ろうとするし。


ふて腐れていると、彼が私に近づいてきて。




「お前、わかってんの?」

「……、な、なにが」

「俺がいなきゃ、あんな奴らに食われてたかもしれねえってこと。……俺も“あんな奴ら”と同類だってこと」




そう言う彼は、私が黒龍について理解しているということを悟っているらしい。


……“同類”。たしかに言われてみれば、ある意味そうかもしれない。

だけど私には、彼がさっき私を助けてくれたことだけがすべてで、彼がアイツらと同じ“夜の人間”だとしても、それは私の気にする理由にはならない。




「それに。俺はお前を助けたつもりはねえ」




うん。なんとなく、そう言うと思ってた。




「あなたがどういう意図でああしてくれたのかは知らないけど、私は結果的に助かった。あなたのおかげで。だからお礼がしたかった。それだけ」