しまった、と思ったときにはもう遅かった。
“どこでも誰に対しても冷静な卯月紗菜”であることに、全神経を集中させてきたのに。
こんな声を荒げるなんて、ぜんぜん“卯月紗菜らしく”ない。
「……帰ります。色々とありがとうございました。さよなら」
「え、ちょ、待ちなよ紗菜ちゃ……」
「きっと今度こそ関わることなんてないと思うので安心してください」
それだけ言い残して私は立ち上がる。荷物なんてない。
学校で倒れてここに運ばれたみたいだから、きっと学校に置いたまま。特に何も入ってないから別にいいんだけど。
「あの、紗菜さん荷物……」
「え?」
今まで黙ってこっちを見ていた時田さんが、申し訳なさそうに声をかけてくる。
凛太郎や朧よりも身長が高いのに、不思議と威圧感はない。
「……荷物、その、通学鞄。先生に聞いたら教えてくれたので。ここにありますけど……」
「……持ってく。場所教えてもらえる?」
そう言うと、時田さんは軽く頷いてついてくるように促す。



