「……怒らないんだ。……昨日私は“逃げた”のに」
私がそう言うと、“別にンなこと思ってねーよ”と言う凛太郎とは裏腹に、朧さんが少し気まずそうに痰を切った。
「……紗菜チャン、どっからきーてたの」
「時田さんを考えなしって罵ってた辺りでしょうか」
まあたしかに、時田さんは単細胞っぽいけど……とは思ったけど、さすがに口にはしなかった。
もしかしたら命の恩人になっていたかもしれない……って、そこまで酷くはなかったかもしれないからあくまで“かも”だけど、そんな人を真っ正面から罵るほど私は歪んでない。
「わりと最初っからだね……、というか別に罵ってはないよ」
「そうですか、別にどっちでもいいです」
時田さんは罵ってたとしても別に気にしなそうだし。私に言われたわけじゃないし。
「一言余計なんだよなあ、黙ってたらカワイーのに」
「そっくりそのままお返しします」



