ここに来ることも、凛太郎や朧さんと会うのも……きっとこれが最初で最後。
それなのに連絡先を交換したって、消す手間が増えるだけ。
「ふぅん……つまんないの」
きっと朧さんはそんなこと思ってない。なんとなく、そんな気がした。
彼は私になんて興味ないんだと思う。だから、連絡先を聞いてきたのだって、きっと彼なりの社交辞令だと思う。
最初から、彼にとってはどうでもいいことなんだと思った。
「にしてもだめですだよー?オンナノコが顔に傷作るなんて。まあ、もし治らなかったら凛太郎に責任取ってもらいなよ」
「おい朧」
その口ぶりだと、朧さんが言ってるのは「責任取ってお嫁さんに……」とか、そういうニュアンスなのだろう。
それを理解した凛太郎は、朧さんに噛みついている。
それがなんだかおかしくて、思わず頬が緩む。
「ふふ……」
笑いがこらえきれない私を、二人が少し驚いたような顔で見ていることに気がついたのは、しばらくしてからだった。



