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「紗菜、入れ」




そのまま和泉さんに連れてこられたのは、廃屋に近い倉庫。

“入れ”もなにも、手を引かれているから、入ろうとしなくても自然に入っていく。




「凛太郎さん、おかえりなさい!」

「ああ」




和泉さんを出迎えてきたのは、仔犬みたいな男の子。

“仔犬みたい”といっても、私よりとても大きいし、髪は紫色。


和泉さんにすごく懐いてるんだな……なんて思いながら彼を眺めていると、不意に目が合った。

私が軽く会釈をすると、彼は目を丸くさせて。




「……り、凛太郎さんが……女連れてる……」




絶句したような表情で、今にも息絶えそうな声でそう言った。




「……拾ったんだよ。変な勘違いすんな」

「でも、凛太郎さんが女連れてるなんて初めてじゃないですか」




私は仔犬じゃない……なんてツッコミを入れる前に、私をそっちのけでどんどん会話を進める二人。

私の存在、完全に空気。




「……んなことは別に今はどーでもいいんだよ。時田(ときた)(おぼろ)呼んできてくんねえか」