上から降ってくる足を、止められる手段はない。辛うじて出来るのは、重い腕を懸命に持ち上げ、胴に降りかかる痛みにクッションを与えることくらいだ。

世間一般的に見れば父親と呼ばれるこの男の気が済むまで殴られ蹴られ、嵐が過ぎ去るのを待つ。この男の目に、私が娘として映ってないことはわかってる。

嘘を事実として作り上げ、針の筵に晒される。特に理由がなくても、難癖をつけられて理不尽を向けられる。

それらに慣れることなんて出来ないけれど、自分の運命くらいは受け入れてきた。




小学校3年生の時、母親が外に男を作って家を出て行った。

それを機に優しかった父親は豹変、何かにつけて私に暴力を振るうようになった。

私の体から痣の姿が消えることはなくなり、勤務先の町役場や近所で見せる穏やかな笑顔が、私に向けられることはなくなってしまった。

母親と、それから母親によく似た私が、きっと憎くて憎くてしょうがないんだろう。

母親がいた頃まで、父親が穏やかで優しかった頃まで、時間を巻き戻すことなんて出来ない。