「おはよう、十紀和」


席に鞄を下ろすと、席に群がっていたクラスメート達と会話していた彼が視線を上げた。クラスメート達が私に気付いてそそくさと席のスペースを空けたので、彼の目が私を捉えてしまったのだ。

色素の薄いガラス玉のような瞳が私を映して、きらきらと世界を反射させる。眩しい。ずっと真っ暗闇にいる私には眩しすぎて、目がくらむ。


「…………」


何故か真っ直ぐに向けられる視線。周りのクラスメート達が息を呑むように私達2人の動向を伺っているけれど、私は構うことなく彼から顔を背けて席についた。


「そっ……そういえば! 今日、3時間目体育だがや! 俺、めちゃくちゃ楽しみなんよ!」

「男子はサッカーしちょるんよね、今! 奏多くんは運動得意?」


一瞬空気が凍りついて、次に場を温めようと慌てたような声が聞こえてくる。


「あ、そうなの? 俺、昔サッカーやってたから得意だよ」