我慢できずに、頬を緩めてしまう。


「元気そうでなにより」


 …………!


「金曜日は。心配かけて、ごめんね?」

「巻き込んだのは俺だ。悪かったな。それから。お節介なこと、言って」

「そんなことないよ。病院の先生に、言われたもん。こういう事故から大きな病気に繋がることもあるから。ちゃんと診察受けに来てくれてよかったって」

「もう。こんな風に、話せないと思った」

「!」

「また話せてることが。嬉しい」


 …………わたしも。

 わたしも、桝田くんと話せて、嬉しい。


「嫌われてなくて。よかった」

「俺の台詞」

「え?」

「俺が古都にしたこと。許してくれないだろうなって思うと。目、合わせられなかった」


 それで、廊下ですれ違ったとき、避けられたの?


 ふいに、桝田くんの唇に視線を向けて。

 キスした記憶がよみがえり、カラダが熱を帯びていく。


 同時に、あることに、気がついた。


「切れてる、よ」

「は?」

「…………くち、びる」

「あー。舐めときゃ治るんじゃね」