「冗談じゃない」


　声のボリュームを極力さげて会話を続けた。


「結構お似合いだと思うんだよね〜」

「桝田くんのこと好きなのは、えみるでしょ」

「やっぱりあの王子様は。あたしには扱えないかなって」


　えみるが無理なら、恋愛初心者マークのわたしは、もっと無理だ。


　だいたい、わたしはマサオミくん一筋だし。


　よりによって、あの桝田くんに恋を……？


　ありえない。


　桝田くんだって、わたしに好かれちゃいい迷惑だ。


「見てみたいなー。氷の王子様が心を溶かすとこ」

　それに関しては、思わず頭を縦に振りそうになったのは――


『腫れ物扱いされるだけだ』


　あのとき。

　桝田くんが寂しげに見えたと同時に、心のバリアを張っていたように思えてならなかったからだ。