「……そんなこと、ない」

「あるよ」

「ないよ」

「じゃあ。この先、我慢するつもり?」

「がま、ん?」

「行きたい場所も。やりたいことも。桝田となら叶わないこと、たくさんあるだろ」


 ――――!


「桝田が。こんなふうに遊園地に連れてきてくれる?」

「…………」

「痛みを知らない人間と、心を通わせられると思う? いつか必ず。耐えられなくなる。彼と自分の違いに。そのとき、情はもっと膨らんでいるだろうね。離れたくても離れるわけにはいかなくなる。そうなる前に。手放すってことも大事だと僕は思うよ」

「手放す……?」

「期待させちゃ可哀想だと思わない?」