桝田くんの顔が、近づいてくる。


 目をつむった、数秒後。

「キス待ちしてんじゃねーよ」

 軽く、デコピンされてしまった。


「なっ……」

「俺がそう、いつもいつも。甘いことすると思うなよ」


 でも、今、甘い空気になってたよね!?


「さーて。ホラー見るか。スプラッターもの」


 身を起こすと、長い脚を組み、タブレットを操作する桝田くん。


 “土曜。俺んち来れば”

 “もっとドキドキすることしてやるから”


 ――あんなこと言われたから


 なにかが起きるかなって、ちょっとビクビクしていたけれど。


「グロいのはダメぇ……!!」

「わかったわかった。精神的に追い詰められる方にするから安心しろ」

「なんでホラー、一択なの?」

「その方がコトリの反応が面白そうだから」


 最高の、初デートになった。