…………知ってるよ、そんなこと。


「だから、悩んでるんじゃん」


 好きだから。

 マサオミくんに、女の子としてみてもらいたいから。


「おい。なに、泣いて――」


 溢れそうになった涙を、全力でぬぐう。


「泣いてない!!」

「いや、今。あきらかに……」


 無理矢理涙を引っ込める。

 この男の前で、泣いたりするものか。


「人でなし。悪魔。地獄に還れ」

「落ちろ、じゃなくて。かえれって」


 悪魔が。


「俺、どこ出身なんだよ」


 ふわっと、笑ったものだから。


「…………できるんじゃん」

「は?」

「優しい、カオ」


 調子が、狂う。