桝田くんは痛みを知らない

 暑くなくて。

 あんまり動き回らなくて。


「……プリ撮りたい」

「は?」

「プリクラだよ。知らない?」

「知ってるけど撮ったことねえな」

「ゲームセンターに行けば、たいていあると、思う」

「誰がプリクラなんか……」

「なんでもって。言ったのに?」


 桝田くんと、後部座席で見つめ合う。


「嘘つき」

「……一宮(いちみや)、ゲーセンだ」

「どちらのです?」

「どこでもいい。ただし、プリクラあるとこな」

「かしこまりました、坊ちゃん」


 一宮、と呼ばれたのは40代くらいの渋めなオジサンだ。

 黒い髪をオールバックにしている。


「プリクラ撮ったあとのことも。考えとけよ」


 ほんとに、なんでも聞いてくれるんだ。