「俺っておかしいのかな」



図書館にいることを忘れて、思わず心の声が出てしまった。

それと同時に、自分の前の席に誰かが座っていることに気づいた。

その人は、俺の声に反応するようにこっちを見る。



───え?



一瞬、自分を取り巻く全ての音が消えた。

図書館だから静かなんだけど、本をめくる音も外から入ってくる風の音も聴こえなくなるぐらい。


目の前に座っていた女性は俺と目があって、ちょっと驚きながらも少し口角を上げて笑った。



───ドクン。



自分の心臓が大きく音を立てる。

この静かな図書館に響き渡ってしまうんじゃないかと思うくらいに。



俺はその時初めて、名前も知らない感情でいっぱいになった。