先生の全部、俺で埋めてあげる。




しばらく図書室で先生の余韻に浸っていると、扉が開く音がした。


さっき、加ヶ梨先生を呼びに来た先生だ。


「キミ、まだ残ってたの?カギ閉めるから早く帰りなさい」


「すみません」


時計を確認するともう1時間近くたっていて。


外は真っ暗だった。




ちょっとでも加ヶ梨先生が来たんじゃないかって期待してしまった。




学校を出て駅までの道を一人で歩く。




先生、俺が手を握った時、嫌がらなかったんだよな。


今までだったら、たぶん”離して”とか言ったり、すぐ俺の手を振り払ってたと思う。


まあ、避けられても俺は引く気なんてさらさらないけど。


そんな俺を見越して、
もう抵抗すんの、あきらめたのかな。


どっちにしても先生の手に触れた自分の手は、まだ熱を帯びてるかのように、じんわりと温かい。