これって、なに?


言葉が詰まって出ないので、安奈の後ろに立っている舞香に目で尋ねた。


明らかに安奈は弱っている。


私たちを遥か上空から見下ろし、気に入らないものは徹底的に叩き潰していた、城田安奈。恐ろしい二面性を持った、クラスカーストの女王様。


その安奈が痛ぶられるいることに、思考が追いつかない。


でもこれって、舞香が?


「前にも言ったよね?やり返さなきゃ、やられっぱなしだって。これって、優子にも責任あるんだよ?」


口ぶりは、いつもの舞香と変わらない。


ただ、その表情だけは、これまで見たことがない恍惚としたものだった。


今を、楽しんでいるような__?


「私に、責任?」


「そう。まだいじめられ始めの頃なら、ここまでやらなくて済んだのに、あれからいじめ抜かれたでしょ?だから、食い止めるにはもう、ここまでやるしかないんだよね」


そう言いながら、なにやらパチパチと鳴らしている。


あれは、スタンガン?


「ほら、起きなって」と、スタンガンを安奈の背に押しつけた。


「あぁああああああー!」


目をひん剥いて叫び声を上げた安奈が、口からよだれを垂らして朦朧としている。


今、目の前で起きていること全てが、なにも信じられなかった。