案の定、桐崎舞香は1人だった。


私は話しかけられると困るので、休み時間になるとすぐ、彩音の席に移動する。


誰も近寄らず、声を掛けない。


だって女王様の許しが出ていないのだから。その安奈も、転校生をどう扱うのか思案しているようで、とにかく教室の空気がどこか張り詰めていた。


次は視聴覚室だ。


舞香と隣同士にならなくていいと思うと、少しホッとする。


仲のいいと友達と連れ立って、みんなが教室を出て行く。


戸惑ったように突っ立っている舞香に、誰も声を掛けない。どうやら、しばらく1人にして様子見をすることになったらしい。そこからイジメに発展する可能性もある。


たぶん、舞香が可愛らしいのが気に入らないんだ。


安奈はこのまま、新しいターゲットにするかも。


大々的ではないにしろ、いつも安奈のいじめの犠牲になる女子はいた。


もしかしたら、それが舞香になるかも__。


「桐崎さん、次は視聴覚室だから」


そう声を掛けたのは、彩音だった。


「あっ、そうなんだ」


「場所わからないよね?一緒に行こ」


そう言うと、彩音は私を見た。まるで、私に了解を求めているように。


あぁ、忘れてた。


これが私の親友、新山彩音なんだ。


彩音は、困っているひとを放っておけない。それは、弱いものの気持ちがよく分かっているから。


「うん、一緒に行こう」


私がそう言うと、舞香が花が咲いたように微笑んだ。