頬を手でおさえ、唖然と目を見開く舞香。


まさか殴られるとは思っていなかったんだ。


「な、なにするのよ‼︎」


安奈に飛びつく舞香を、取り巻きが抑え込む。それでも舞香の怒りは凄まじく、抑える手を振り払って安奈の上に馬乗りになった。


誰かに組み敷かれ、顔をひきつらせる安奈なんて初めて見た気がする。いつも優位に立っていた。


それを覆す女子が現れるなんて__。


舞香が拳をその顔に叩き込もうとした時だ。


「なにしてるんだ!」


担任の島谷先生が教室に入ってきた。


これは、いじめの決定的瞬間じゃ?


「先生、桐島さんがいきなり殴りかかってきて」


目に涙を浮かべている安奈が訴える。


「違います!もうずっと、優子がっ、高梨さんが城田さんたちにいじめられてて、それで」


「うそ!みんな見てたわよね?」


とうとう涙を流した安奈が、周りの女子に問いかけると__全員が頷いた。


「じゃ、先生、これを見て下さい」


舞香が私の机から取り出したのは、真っ黒に塗り潰された教科書だ。


床には虫のお弁当。


机には、今朝の落書きが残っている。


さすがの安奈も分が悪いと思ったのか黙り込んでいて、舞香が私に向かって力強く頷いた。


島谷先生が、険しい顔で机の落書きを見ている。


そして顔を上げた。