「振られた〜」

「またかよ。いい加減、色んな人に告白すんのやめろよな」

「だって〜。みんなかっこいいんだもん」

「だからってな…」

「あ!イケメン!ちょっと行ってくる!」

「あ、おい!…ったく」

俺の幼馴染はとにかく惚れっぽい。

かっこよければ知らない人でも簡単に好きになれるようなヤツだ。

片っ端から告白しては振られ続けている。

「はあ〜。連絡先交換できなかった…」

「だから!そうやってグイグイ行くのやめろ!相手が迷惑だろ?」

「運命の相手かもしれないじゃん!」

「あのな〜」

こんな感じで毎日のように振られては俺に報告し、俺はやめろと言っている。

「ねえ、いつものちょうだい」

「はあ〜。お前、これだけのために告白してるのか?」

「へへっ、まあそれもある」

「俺金欠になるだろ」

「ごめんってば」

いつものというのは、こいつが大好きなバナナのことだ。俺の家は青果店をしていて、振られたときは、俺がバナナを奢るというルールがある。

「早く彼氏作れよ。俺の金が全部消える前に」

「ん〜、そうしたいのは山々なんだけどね〜」

早く彼氏を作って欲しい。

この気持ちは本心だ。でも、彼氏にするのは俺にして欲しい…なんて。こんなこと絶対に言えない。言ったら今のこの関係が崩れてしまう。だから、俺は自分の気持ちを隠してこいつの恋愛を応援している。

本当は辛いけど応援して、振られたって聞くたびに安心する自分が嫌だ。

こいつに彼氏ができれば早く忘れられるはず。
だから…早く彼氏作れよ…。