貴方はいつも、欲がなかった。
だから私は「あれがしたい。」
と強請った。

貴方はいつも、欲がなかった。
だから私は「これが食べたい。」
と連れ回した。


そんな貴方は 私に言った。
「君が一番、好きだよ」と。

そんな貴方は 私に言った。
「だから少し 離れたい」と。


私も貴方が好きだから。
貴方の言葉に従って、
貴方の前から姿を消して。

私の思考の何処かには
あなたの事がこびりついて 剥がれずに
それでも迷惑かけまい、と、
息を潜めて、隠れてた。


空はいつか、こういった。
『空はいつも一緒だ』と。
『何処にいても、味方だ』と。

空の下で繋がってても、
やはり ソレ は見えなくて。
貴方の形も 見えなくて。

それでもずっと、好きだった。


気づけば貴方の隣には
優しく笑う誰かがいて。

嗚呼、私は要らなかったのだ


同じ空の下で
静かに透明な血を流す。