『薔子』——しょうこ

私はこの名前が大嫌い。

こんな古風な名前、時代遅れだわ。

私の家には「薔薇の花園」と呼ばれる庭がある。
その名の通り、あたり一面薔薇の花が綺麗に咲き、とても美しい。

昔からその場所は私のお気に入りだった。

「…薔子さん。またこんなところにいたのね」
「お母様…」
「宗介さんがお見えになったわよ」
「うん」

宗介さんとは、私の許婚のこと。
やさしくてかっこよくて、昔から私のことを好いてくださっているけど、私自身、結婚したいとは思わない。

決められた相手なんて…絶対に嫌。


「お待たせいたしました」
「またあそこにいたの?」
「はい。私にとって安らぎの場なので…」
「そっか」

宗介さんは私より3つ年上で、いつも落ち着いている。
学校ではとても人気なのだとか。

「これから買い物にでも行かない?」
「…いいですよ」

本当は行きたくないけど。