「私の母のことだよ」

「ん……?」

瞬時に天は、天野家の写真を思い浮かべた。美しい女性の姿を。

「どういうことだ?」

「母はアイドルだったんだよ」

「……え」

「でも活動期間は一年もなくて。すぐに辞めた理由は、父と結婚したこと」

「……ええっ」

「あの男はだから、社長を憎んでいた。今回のことでそれが爆発したんじゃない」

はー、と天は気の抜けた息を吐く。

不意に足立が席を立った。

「君たちは、アイドル辞める気ないんだろ。せいぜいうまくやりなよ」

ばくんと心臓が跳ねた。なんとか声と態度に出すことは抑えたが、速まった鼓動はなかなか鎮まらない。