「…鼻、ひくひくしてる」

隆之が私の鼻を見て、低い声で言う。

私は慌てて自分の鼻を隠す。

「…俺の事、怖いんだな」

隆之の顔に薄ら笑いのようなものが浮かぶ。

「本当かわんねーな、真於は…」

隆之はそう言ってハハッと笑うと、自身の髪をぐしゃぐしゃにする。

うつむいたその顔から、涙が零れるのが見えた。

「隆之…、泣いてるの?」

隆之は勢いよく顔をあげる。

それは間違いなく泣顔だった。

だけど、怒っているような顔。

隆之が私の顔の真横にバンッと力強く握りこぶしを打った。

その音と、勢いに、私はびくりと体がはねて、鼻がひくひくする。

すぐ至近距離に、隆之の顔がある。