前職でも事務をしていたという宮端さんは仕事が出来る女性だった。

隣の席になった宮端さんが私に書類を渡してくる。

「春川さん。終わりました」
「もう?早いわね」

無駄な動きがなく、ミスも殆どない。

「じゃあ、この仕事もお願いしていい?」
「もちろんです!ドンドン仕事回してください!」

そしてパワフルだ。
宮端さんは顔の前で両手を握りしめる。その頼もしさに思わず微笑んでいると、私と宮端さんの間に無愛想な声が割り込んだ。

「おい。18日11時から会議」
「承知しました。会議室予約取ってきます」
「ん。これ資料」
「12部コピーしてホチキス止めしておきます」

あいも変わらず、真月の指示は言葉が少ない。

「すごいですね。息ぴったりです」

宮端さんが大きい目をパチクリさせながら、拍手している。
長年一緒にいる「太陽と月」がなせる技だ。

「宮端さん。会議室の予約の仕方教えるから一緒に来てくれる?」
「はい!」

宮端さんは元気いっぱいにメモ帳を持って立ち上がった。新しい仕事が楽しいのか、とてもイキイキしている。

「うちの会社は月一で企画部の定例会議をするの。メンバーは基本、12名で固定だからその資料を渡されたら12部コピーとホチキス止めね」
「はい!12部ですね」
「特に八幡主任は殆ど指示出してこないから、そこまで汲み取って行動して」

会議室までの道すがら、企画部事務の仕事を教えると、宮端さんは熱心にメモを取る。