そう、優のような人が実際にいるのだ。身の程知らずだと言われようと、自分がまさか遊び相手だったなんて思いもしなかった。

ぜひとも、そこのところははっきりさせておきたい。

「さっきも言っていたな。遊ばれた経験があるということか?」

「…………」

否定はしないけれど肯定もしない。これだけで十分答えになったようだ。

「俺だったらそんなことはしない。だから、柚」

コーヒーカップをテーブルに置くと、真剣で熱っぽい眼差しを注がれた。見ているだけで身ぐるみを剥がされるような、そんな気持ちになる。

この目を見てはいけないと、本能がそう告げている。

「俺のところにこい」

「な、なにを言っているんですか」

「本音をそのまま言っているんだ」

話していても埒が明かない。篠宮先生とはそういう人だと今日一日で思い知ったはずなのに、私はまたまんまと罠にハマっている。

どうしようもないほどの身体の火照りと顔の熱さに、恥ずかしい気持ちでいっぱいになった。

「そ、そろそろ寝ます。おやすみなさい」

淹れてくれた紅茶を口にすることなく、立ち上がりリビングを出ようとする。