次の日久しぶりに出勤した私を待ち構えていたのは、同僚や後輩、先輩たちからの温かい笑顔だった。皆にこやかに挨拶してくれて、緊張していた私はみんなの優しい反応にホッと肩の力が抜けた。

「日下部さんっ! どうやって篠宮先生を落としたんですか?」

「すごいです、あの篠宮先生を!」

「羨ましいわ」

ナースステーションで四方を取り囲まれ質問攻めに合う。私はどう答えたらいいのかわからなくて、曖昧に笑うことしかできなかった。

「あんまりイジメないでやって」

そうやって背後から私の隣に立ったのは、話題の修さんだ。

「篠宮先生、おはようございますー!」

「馴れ初め聞かせてくださいよ」

「誰にも言いたくないから、ヒミツ」

「えー!」

修さんはにこやかに笑いながら電子カルテを操作する。私も頭を仕事モードに切り替えて、早速受け持ち患者の情報収集をした。

気が重いのは柊会長の担当だから。柊会長は結局あの日緊急オペをすることになり、手術は無事成功。そのまま外科に入院になり、主治医を修さんが担当している。

看護記録を読んでいると、部屋へ行くのがますます億劫になってくる。気に入らないことがあるとすぐに暴言を吐くらしいのだ。新人や若手のスタッフが何人も泣かされ、ろくに処置もさせてもらえないらしい。