小さなノックのあと「はい」と返事をすると、遠慮がちにドアが開かれる。濡れ髪のままタオルを首にかけた修さんが、おずおずと部屋に入ってきた。

「って、その格好! お父さんのトレーナーじゃないですか」

かなりのイケメン、しかもかなり容姿の整った大の男性に、どう考えてもそのトレーナーはない。丈が短くて合ってないし、どう見ても窮屈そうだ。

かといってお兄ちゃんの服もサイズが小さくて合わなさそう。

「あ、そうだ。真也に聞いてみよう。ちょっと待っててください、電話してみます」

「真也?」

「幼なじみです。今地元に帰ってきてて、昨日偶然出会って一緒にご飯を食べたんです」

テーブルの上にあったスマホを手に取り、真也の番号を表示する。すると刺さるほどの視線を感じて思わず顔を上げた。

「ど、どうしました?」

「柚の口から他の男の名前を聞くと、無性に腹が立つ」

「え?」

「幼なじみといったら、あれだろ? 必ず一度はどちらかが恋愛感情を抱くものだ」

不貞腐れたように言う修さんが子どもみたいでかわいく見える。いつも自信たっぷりで、何事にも動じないあの修さんが嫉妬心を丸出しにしているなんて。

「ふふっ、あはは」