天音さんはどうしてここへ?

本来なら私の顔なんて二度と見たくもないはずだ。

「この度は父が失礼なことを言って申し訳ありませんでした」

腰を下ろすことなく、身体を直角に折り曲げて頭を下げる。

「や、やめてください。そりゃ、理不尽なことを言われたとは思いますけど、天音さんが謝ることじゃありませんので」

「いえ、ちがうんです。こうなってしまったのは、全部私の責任なのです。だから、柚さんには本当に申し訳なくて」

語尾が震えている。華奢なその肩も、小さく震えていた。

「どういうことですか?」

まったく持ってわけがわからない。

全部、天音さんの責任?

「ウソ、なんです。私、誰にも宮本のことを言われてなんかいないんです」

信じられない言葉に耳を疑う。

誰にも言われていない?

「宮本が色んな女性と関係を持ったり、遊んでいることは以前から知ってました」

ガバッと顔を上げた天音さんは、まっすぐな目で私を見つめる。力強い瞳だけれど、どこか弱々しくて頼りない。攻撃すると、今にも泣きだしてしまいそうなほどだ。

「どうしてそんなウソを……」