「あ、あの、私、帰りますね」

「どうしてだ?」

「着替えないとですし。一度帰って出勤の準備をしたいので」

「昨日はあんなにかわいかったのに、今朝は魔法が解けたみたいにあっさりしているんだな」

「なっ」

冷めたはずの熱が再びぶり返し顔が一瞬で熱くなった。

対する篠宮先生はそんな私を見てクスクス笑い、余裕の表情だ。

からかわれている?

ここは私が気を強く持たなければ。

そうでもしないと振り回されるがままなんだもの。

「と、とにかく失礼します」

「ちょっと待った」

手首を掴まれベッドへ引き込まれたかと思うとそこに身体が沈む。目の前には篠宮先生の顔があり、心臓が忙しなく動き出す。

「な、なにをするんですか」

「昨日は曖昧になってしまったが、軽い気持ちであんなことをしたわけじゃない」

「それは……」

そんなに真剣な表情で言われると、なにも言えないじゃない。

流されていいと思いはしたけど、私だって軽い気持ちでしたわけじゃない。

篠宮先生の部屋にきたのだって覚悟の上だった。

「柚の気持ちが知りたい。俺のことを、どう思っているんだ?」