身体の奥から絞り出すような声だった。


ギュウッと私を抱く腕に力が込められる。今まで何度も抱きしめられたけれど、こんなにも激しくきつく抱きしめられたのは初めてだ。

まるで逃げ出すのを阻止するかのように、奪われるのを阻むかのような抱擁。

身じろぎすらできずにただ抱きこまれている私に速い鼓動が伝わってくる。


「ち、違うの! ナツさんを捜しに行っていたの!」


ここが図書室という状況も忘れて胸の中でもがいて声を上げる。

私の言葉に驚いたのか、ほんの少し腕の力が緩まった。その隙に顔を上げて一気に言葉を吐きだす。


「黙って、嘘をついていたのは悪いと思ってる。でもどうしてもナツさんを捜したかったの。話がしたかったの」


二重の目を見開いたまま、雪華はなにも言わない。

所在を失くしていた指でそっと引き締まった背中に触れると、コトンと私の右肩に自身の頭を凭せかけてきた。


サラサラの黒髪に頬を撫でられて、こんな状況なのに想いが募る。


「……じゃあゆきちゃんが男ってなんで黙ってた?」


責めるような、それでいて拗ねているような言い方で再び尋ねられる。

「黙ってたんじゃなくて、この間お母さんに聞いて……話すのを忘れてたの。公園に向かう途中で思い出して、ゆきちゃんも見つかったらいいねって梨乃と話してただけなの」

勢い込んで話す。