「ちょっと、ナナ? 聞いているの?」
「あっ、うん。わかってる!」
「本当に? ひとりで行ったらダメよ?」

念押しされてこくりと頷く。

「雪華になんて言ったらいいかな?」
「私の図書室整理を手伝ってから帰るって言えば? 嘘じゃないし」
「そうだね、そうする。じゃあ本当に図書室整理手伝うよ!」

そう言うと親友が律儀にお礼を言ってくれた。


放課後、約束通り図書室の整理を行った。
傷んだ本や入荷した本のチェック、修復作業もあるため、それなりに忙しい。

もちろん、書架の並びかえも行う。その間図書室を使用禁止にはせずに一部の本の貸し出し手続き等は行うため、一般の生徒の立ち入りは可能だ。


私は現在、図書室一番奥の書架の並び替えを梨乃と共に行っていた。

「ごめんね、本当に助かる。こんなに人手が少ないとは思わなかったわ」

脚立に乗りながら親友が眉間に皺を寄せる。


「仕方ないよ。皆、病欠なんだから」

参加予定の図書委員の大多数が今日学校を欠席していた。

「そうは言っても、なんでこんな日に限って夏風邪が流行るのよ」


作業に没頭し、一時間ほどが経過すると目途がついてきた。習い事などがある生徒たちが帰り始め、図書室内は閑散としだした。

監督に来ていた先生も作業の進捗具合に満足したのか、帰る時は声をかけてねと言って職員室に戻っていた。