駅に着き、タイミングよくホームに滑り込んできた電車に飛び乗る。

クーラーで冷えた車内で、ふうと小さく息を吐いた。車内は様々な制服姿であふれていた。

偶然空いていた端の座席に座ると、再びスマートフォンが振動した。そっとスマートフォンを取り出すと、梨乃からメッセージが届いていた。


【王子様はやっぱりお迎えにきて、姫の不在にご立腹よ。理由は伝えたけど納得してないみたいだから急いで電車に乗って。捕まるわよ?】

面白がっているのか忠告してくれているのかわからない文面に眉をひそめつつ、親友の予想に舌を巻く。


【どうして迎えに来るってわかったの? 雪華はなんで怒ってるの? 伝言してくれてありがとう】

簡潔に梨乃に返事を返す。

【王子様の執着はすごいって言ったでしょ? ご立腹の理由はナナが王子様に黙って下校したからじゃない?】

すぐに返信が来て、内容に溜め息を吐く。

やっぱりよくわからないけれど、迷惑をかけた旨を再度謝罪するメッセージを送信した。


同じタイミングで雪華からメッセージが届く。

【なんでひとりで帰った? 今どこだ? どうして電話に出ない?】


あなたが好きだと気づいたから、気持ちを落ち着けたいから一緒に帰れない、なんて言えない。

会って話したら気持ちが溢れて泣きそうになってしまうから、ナツさんを羨んでしまうから、今は話したくないなんて言えない。


だから返事は返せない。


力なく緩慢な動作で制バッグにスマートフォンを押し込んだ。しばらくスマートフォンは振動を続けていたけれど、応答を放棄した。